Hemithyroidectomy

治療概要

半甲状腺切除術(Hemithyroidectomy)は、片側の甲状腺葉を外科的に切除する手術であり、病変の甲状腺組織を除去することを目的としています。この手術は、良性または悪性の甲状腺疾患、例えば結節、腫瘍、機能異常に適用されます。手術の過程では健側の甲状腺葉を保存し、正常な甲状腺ホルモンの分泌機能を維持します。

全甲状腺切除と比較して、この術式は甲状腺機能を最大限に保持でき、術後の長期ホルモン補充療法の必要性を減少させます。一般的な適応症には、片側の甲状腺結節、乳頭状癌、グレーブス病などがあり、腫瘍の大きさや位置、患者の全体的な健康状態に基づいて適応性を評価します。

治療の種類とメカニズム

この手術は、従来の開放式と内視鏡微創の2種類に分かれます。従来の手術は頸部に直切りを行い、病変の甲状腺葉を直接切除します。一方、微創法は内視鏡器具を使用し、組織の損傷や瘢痕を減少させます。メカニズムとしては、病変組織を除去することで腫瘍の脅威を排除し、健側の甲状腺葉がチロキシン(T4)や三碘甲状腺原氨酸(T3)の合成を継続します。

手術中は喉返神経や副甲状腺を正確に保護し、声帯機能や血中カルシウムの調節に影響を与えないよう注意します。手術時間は約1〜3時間で、全身麻酔を要し、術後は2〜5日間入院して経過観察します。病理検査では切除組織の悪性指標を分析し、今後の治療方針を決定します。

適応症

  • 片側の良性甲状腺結節(直径>4cmまたは圧迫症状がある場合)
  • 片側の甲状腺癌(乳頭状癌、濾胞癌の早期段階)
  • グレーブス病による片側の甲状腺の著しい腫大
  • 放射性ヨウ素治療後に改善しない片側の病変

横葉の浸潤や多発性結節を除外し、病変が周囲組織に侵入している場合は全甲状腺切除にアップグレードする必要があります。術前には超音波検査、細針穿刺、機能検査を行い適応性を確認します。

使用方法と投与量

手順は、全身麻酔後、頸部に3〜5cmの横切りを行い、病変の甲状腺葉と周囲組織を分離し、血管を結紮して目的の葉を切除します。微創法では、0.5〜1cmの小切開を2〜3箇所設け、内視鏡器具を用いて操作します。

「投与量」という概念はなく、病変の大きさに応じて切除範囲を調整します。術後には凍結切片を用いて縁の清浄度を確認し、癌細胞の拡散が認められた場合は切除範囲を拡大します。術後は甲状腺機能とカルシウムイオン濃度を定期的に監視します。

効果と利点

  • 健側の甲状腺機能を保持し、永久的なホルモン補充療法の必要性を減少させる
  • 瘢痕が目立たず、美観に優れる。微創術式は回復時間を40〜50%短縮
  • 正確な切除定位により、正常組織への損傷を低減

全甲状腺切除と比較して、術後の甲状腺機能低下の発生率は15〜20%に抑えられ、患者の生活の質が著しく向上します。内視鏡技術により瘢痕は3cm以下に縮小され、美容上のニーズにも応えられます。

リスクと副作用

  • 即時リスク:術中出血、気管の虚脱、麻酔合併症
  • 長期リスク:永久的な声帯麻痺(発生率3〜5%)、低カルシウム血症(副甲状腺損傷による)、瘢痕の増生
  • 感染や血腫:二次手術が必要となる場合もあります

約5〜10%の患者で一時的な声帯麻痺が見られ、通常は3〜12ヶ月以内に回復します。両側の喉返神経を損傷した場合は気管切開が必要となることがあります。低カルシウム血症の患者にはカルシウム剤やビタミンDの補充が必要です。

注意事項と禁忌事項

術前には心肺機能の評価を行い、糖尿病や凝固異常の患者は基礎疾患をコントロールします。禁忌事項は以下の通りです:

  • 気管や食道に浸潤した病変
  • 多発性の両側結節
  • 未コントロールの凝固異常

術後2週間は激しい運動を避け、声帯機能訓練により回復を促進します。癌が疑われる場合は術中の凍結切片検査を行い、必要に応じて根治的切除に切り替えます。

他の治療との相互作用

放射性ヨウ素治療と併用する場合は、病変が放射線に感受性があるかどうかを確認します。抗凝血薬を服用している患者は5〜7日間薬を中止しますが、新型経口抗凝血薬(例:Xarelto)は医師の指示に従い調整します。

免疫抑制剤を服用中の患者は、感染リスクを評価します。術後のホルモン補充療法は他の薬剤(例:カルシウム拮抗薬)と相互作用するため、血中カルシウム濃度を監視します。

治療効果と証拠

米国甲状腺協会のガイドラインによると、良性結節患者において半甲状腺切除後、症状の改善率は95%以上です。早期の甲状腺癌患者の5年生存率は98%に達し、全甲状腺切除と有意差はありません。

内視鏡による半甲状腺切除の美容満足度調査では、85%の患者が瘢痕が目立たないと回答しています。長期追跡では、術後の甲状腺機能正常維持率は82%に達し、この術式の機能保持における優位性を示しています。

代替治療法

薬物療法:抗甲状腺薬(例:PTU)はグレーブス病の早期に適用されますが、長期服用や肝毒性のリスクがあります

放射性ヨウ素治療:手術が困難な患者に適用されますが、永久的な甲状腺機能低下を引き起こす可能性があります

経過観察:直径1cm未満の良性結節は、6〜12ヶ月ごとに超音波検査を行うことができますが、悪性腫瘍の早期診断の機会を逃す可能性もあります

 

よくある質問

半側甲状腺切除術後、声がかすれる状態はどのくらい続きますか?

手術により一時的に喉返神経に影響を与え、声のかすれが生じることがあります。多くの患者は数週間から数ヶ月以内に自然に回復しますが、3ヶ月以上改善しない場合は神経損傷の有無を詳しく調べる必要があります。術後は定期的に声帯の機能を評価し、早期に問題を発見し治療を行います。

術後に注意すべき食事制限や栄養補給はありますか?

術後は過剰なヨウ素含有食品(例:昆布、海苔)の摂取を避け、血中カルシウム濃度を定期的に監視します。副甲状腺を切除した場合はカルシウム剤やビタミンDの補充が必要となることがあります。栄養士の指導に従い、低ヨウ素・高カルシウムの食事計画を立て、甲状腺とカルシウム代謝のバランスを保つことが推奨されます。

術後どのくらいで日常生活や軽度の運動に復帰できますか?

一般的には、術後1〜2週間は重い物を持ち上げたり激しい運動を避け、徐々に散歩などの軽い活動を行います。日常的な活動への完全な復帰には通常4〜6週間かかります。個人の傷の治癒状況や医師の判断により調整されるため、早すぎる活動は出血や感染のリスクを高める可能性があります。

術後に定期的に追跡すべき項目は何ですか?頻度はどれくらいですか?

術後は3〜6ヶ月ごとに甲状腺機能(TSH、T4)、血中カルシウム濃度、超音波検査を行い、残存組織の状態を監視します。悪性腫瘍の場合は、追跡頻度を半年ごとに増やし、5年以上継続して再発兆候を早期に発見します。

手足のつりやけいれんが起きた場合、どのような合併症と関係していますか?また、どう対処すれば良いですか?

手足のつりは低カルシウム血症の兆候であり、副甲状腺の損傷によりカルシウム代謝が乱れることが原因です。直ちに医療機関を受診し、血中カルシウムとリンの濃度を測定します。医師は重症度に応じてカルシウム剤やビタミンDを処方し、食事中のカルシウム摂取量を調整する指導を行います。重症の場合は入院治療が必要となることもあります。